電子的ヒトリゴト

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社会心理学者からみた茶道/『心理学者の茶道発見 癒しと自己の探求』

 

心理学者の茶道発見―癒しと自己の探求

心理学者の茶道発見―癒しと自己の探求

 

   私は茶道が好きだ。実のところ,高校時代に私は茶道部に入っていた。しかしながら,残念なことに当時は茶道の奥深さを理解していなかった。当時していた動機は,”なんとなく好き”である。いまとなっては,マインドフルネスの実践としての茶道や思想としての茶道に入門したい気持ちがある。だから,いまいちど茶道を開始しようと試みている。先にマインドフルネスの実践としての茶道と挙げたように,それを敷衍すると,茶道は心理学に関連している部分があるのではないだろうか。すなわち,茶道は心理学的な枠組みにおける合理性を備えていると私は推測している。そのような気持ちから,本書を手に取った。

 著者は,社会心理学者である。心理学者が茶道に関する本を書いているのは珍しい。amazonで調べてみたところ,皆無に等しかった(私が知らないだけかもしれない)。そのため,本書は貴重だ。その内容として,心理学の観点から茶道に関する事柄がエッセイのように書かれている。あまり学術的とはいえないが,著者の長年の心理学の経験をもとに関連づけられている。

 私は,茶道には癒しの効果があるのではないかと思っていたが,著者も茶道の癒しについて触れている。点前によって右脳を使うと,半球が競合するため右脳による不快感は静まるのだという。それだけなら別に茶道ではなくてもいいのかもしれないが,茶道具に特徴的な色合いやデザインのあいまいさに対する投影によっても癒しが起こるといっている。ある意味,それは内なる気持ちに気づくことによる浄化作用といったところだろうか。その他にも,茶道における対人的な距離感に関して,「四畳半の主客は,生理的距離の閾値ギリギリの境目にいると考えてよいのである」といっている。その理由は,対面の距離は88センチが視線交差がない状態での生理的喚起が生じないギリギリの距離であるかららしい。ちなみに,側方で並んで座っている場合は,肩と肩の感覚が30センチのようだ。本書の中では,このような心理学的なことが記載されている。

 本書の公刊がだいぶ前だったからだろうが,マインドフルネスに関する記載がなかったのが残念だった。ただ,学術的ではなくエッセイであるが,このような本があること自体,興味深く,それだけで存在意義があると思う。