電子的独り言

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『人はなぜ集団になると怠けるのか 「社会的手抜き」の心理学』

 集団において、人は個人のまんまの性質ではなくなります。すなわち、集団特有の心理的なプロセスが働くのです。その中の1つの現象として、社会的手抜きが知られています。社会的手抜きとは、「個人が単独で作業を行った場合にくらべて、集団で作業を行う場合のほうが1人当たりの努力の量(動機づけ)が低下する現象」(p.Ⅱ)のことです。そんな社会的手抜きに関する新書が本書になります。

人はなぜ集団になると怠けるのか - 「社会的手抜き」の心理学 (中公新書)

人はなぜ集団になると怠けるのか - 「社会的手抜き」の心理学 (中公新書)

 

  社会的手抜きはあらゆるところでみられます。たとえば、大きいところでいうと、投票行動、小さいところでいうと、援助行動とか、いろいろあるわけです。その中でも驚いたことに、ブレーンストーミングでも起こるんですって*1。言い換えると、ブレーンストーミングを行いながらアイデアを創出したグループより、単独でアイデア出しの作業を行ったあとにグループで発表したグループのほうが、アイデアの総数と独創性が高かったようです。その原因については、ブレーンストーミングにおいて他人のアイデアは批判しないというルールがあるが、それでも評価懸念があったり、また、生産性のブロッキング現象が起こったりすることなど、ほかにもいろいろあります。

  社会的手抜きにおけるパーソナリティの個人差も記載されています。どんな性格の人が社会的手抜きをしやすいか。それは、ビックファイブでいうと勤勉性あるいは協調性が低い人、また、達成動機が低い人、評価されない状況においてナルシシズムが高い人などだといっています。社会的手抜きの性差についてはよくわからないです。著者はいくつかの理由により女性のほうが社会的手抜きをしにくいと推測していたのですが、その後の実験では女性も社会的手抜きをするということが示されています。

 一般的な社会的手抜きが発生する要因として、評価可能性(評価される可能性)、努力の不必要性、道具性(パフォーマンスが何らかの報酬や罰に結びつくと思っている度合い)が挙げられています。一方で、社会的手抜きとはまったく逆の現象もあることが知られています。それは、社会的促進とか、社会的補償とか、ケーラー効果とかです。いろいろ面白いですね。

 最後に、本書では、社会的手抜きをどのように防ぐかという対策が述べられています。それは、詳細は省きますが、以下の9つです。

①罰を与える(しかし、個人レベルにおいてあまり効果はない)

②社会的手抜きをしない人物を選好する

③リーダーシップにより集団や仕事に対する魅力の向上を図る

④パフォーマンスのフィードバックを行う

⑤集団の目標を明示する

⑥個人のパフォーマンスの評価可能性を高める

⑦腐ったリンゴを排除し、他者の存在を意識させる

⑧社会的手抜きという現象の知識を与える

⑨手抜きをする人物の役割に気づく

 社会的手抜きという私たちの生活の中でよくみられる現象でありながら、何ともやっかいな現象です。活動の規模が大きくなるにつれて、集団で活動を行わざるをえないですから、社会的手抜きという現象から逃れられないわけです。これは勉強する価値はありますね。